2014/06/30

地テシ:058 「ゲームウォーズ」の巻 後編

最近、スマートウォッチ関係の情報が沢山出てきましたねえ。気にはなるのですが、私は腕時計などの腕に巻くなにやらが嫌いですので、ココはスルーですかね。いや、スマートウォッチ自体には物凄く興味があるし、あれば便利なんだろうなとは思うのですが、どうもね、手首に巻くってのがねえ。いや、ひょっとしたらヒョロッと買っているかもしれませんけどね。


ゲームウォーズ(下) (SB文庫)
ゲームウォーズ(下) (SB文庫)

さて、前回の続き。アーネスト・クラインの「ゲームウォーズ」(SB文庫)が面白かったという話ですが、まずはあらすじからご紹介いたしましょうか。

舞台は近未来である2040年からの数年。深刻なエネルギー不足に悩まされるその時代では、世界中の人々がOASISというネットワーク型バーチャルリアリティを日常的に使用していた。貧富の差の激しい現実世界から逃避するように、全世界の人々が当然のようにOASISのネットにログインする生活だった。
そんなある日、OASISの開発者であり、それを管理する会社社長であるジェームズ・ハリデーが死去する。そしてその遺言は、OASISのどこかに隠されたイースター・エッグ(隠しメッセージ)を見つけた者に全財産とOASIS経営権を譲渡するというものだった。

と始まるのがこの小説。主人公は当然のようにこの謎に挑み、幾人かの仲間を得ながら最後の謎に迫る。もちろんそれを邪魔しようとする敵対企業が現れ、あの手この手で邪魔をしてくるという、王道と言えば王道のストーリー。いかにもすぎる展開で、それが故にB級な空気を醸し出すのですが、それが故に面白いのですよ。既に映画化が決まっているそうですが、多分面白くなると思いますよ、B級的に。
かの名作「スター・ウォーズ」第一作(EP4)も公開当時はB級呼ばわりされましたし、結局大衆が求めているのはB級名作なのだし、まったく個人的にはB級大作が大好きだし、正直A級B級とかよく判らないのですが、とにかく面白ければいいじゃんという信念で生きてきた私にとって、この「ゲームウォーズ」は相当ヒットしたワケですよ!

その大金を残したOASIS開発者ジェームズ・ハリデーは1972年生まれ。少年時代を過ごした80年代に相当な思い入れがあるらしく、謎を解くヒントがことごとく80年代のギークカルチャーなんです。ええと、geekって判りますでしょうか? 日本語で言えば「オタク」に近いのですが、ちょっと違いますかねえ。あるいは、ナード(nerd)でも構いません。ギークもナードも、まあ大雑把に言ってオタクっぽい人のことです。詳しくはこちらを。
http://wired.jp/2009/07/28/英語の「オタク」:ギークとナードの違いは?/
http://gigazine.net/news/20120105-geek-vs-nerd/
http://www.gizmodo.jp/2013/07/post_12664.html
ここでいうギークカルチャーというのは、80年代以降に流行したPCゲーム、ビデオゲーム、ゲームブック、テーブルトークRPG、SF映画、SF小説、ファンタジー、コミックス、アニメ、特撮、ホームコメディ、ロック、パンク、プログレ、etc...etc...
とにかく、80年代にティーンエイジャーだったギークたちみんなが夢中になったポップカルチャーがてんこ盛りなのです。そして、私は1964年生まれ。ハリデーよりも8年ほど年長ですが、大して変わりはありません。私も80年代にティーンエイジャーだったし、ギークカルチャーにどっぷりだったし、同じような青春時代を過ごしました。だから妙にノスタルジックなシンパシーを感じてしまうのかもしれません。要するに、この小説は大変ターゲットが狭いんです。何のことを言っているのかピンとこない描写も多いかと思われます。

しかし、だからこそ私個人にはヒットしたのでしょう。40代以上のギークやナードたちにはピンポイントでヒットするでしょう。それ以外の方々でも、ある程度サブカルチャーやオンラインゲームの知識があれば面白いと思います。とりあえず、主人公たちが何故あれほど謎解きに夢中になれるのかだけでもご理解頂ければ、細かいギーク的な小ネタは流しても大丈夫かもしれません。あくまでディティールです。ただ、私はそのディティールに盛り上がっちゃったんですけどね。

謎解きと言ってもいわゆるミステリーの手法ではありません。だって細かいヒントがあらかじめ読者に提示されているワケではないから。主人公がなんとかヒントに気付いて解いていくのを楽しむ、いわゆる冒険小説に近いかもしれません。「インディ・ジョーンズ」シリーズみたいな感じ。結構波瀾万丈な冒険をしますよ。バーチャル世界だけでなく、リアル世界でも冒険しますから。バーチャルとリアルの冒険が交錯していくアタリが、ニール・スティーブンスンの「スノウ・クラッシュ」とか、映画の「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」とか「エンジェル・ウォーズ」に似ているかもしれません。どれも私の大好きな作品です。
主人公は少年なので、ある意味ジュヴナイル風の成長譚でもあり、クールジャパン方面のニッポンネタも満載であり、ラブロマンスもあります。邦題は「ゲームウォーズ」ですが、原題は「READY PLAYER ONE」でして、こちらの方が私にはしっくりくるタイトルです。

あまり書いちゃうと面白みが減っちゃうかもしれませんので、このくらいにしましょうか。まあとにかく、ご自分にギークあるいはナードな属性があるのかも、と自覚のある方なら楽しめることウケアイです。もし本当に映画になって日本で公開されたら、それを見に行くというのも良いでしょう。
ただ、かなりピンポイントだということだけご注意下さい。ワケがわからなくて終わる可能性も大いにありますから。その辺は自己責任でよろしくです。


さて、そうしてまたしてもSF熱が上がっている私は、またしてもオーソン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」の新訳版を読んでいるところです。何故かというのはまた次回で。またSF話ですよ! またかよ!

2014/06/27

地テシ:057 「ゲームウォーズ」の巻 前編

みなさんは電車などで本を読んでいて乗り過ごしたコトってありますでしょうか? 本に夢中になってしまって、気がついたら降りるべき駅を通り過ぎていた。そういう体験って誰しも何度かはあるのではないでしょうか。私は何度も何度もありまして、ありすぎてどの本がそうだったかは思い出せません。
乗り過ごすだけならまだしも、乗り損ねたこともありました。本を読みながらホームに立って次にくる電車を待っていたのですが、気がついたらその電車は出て行くところでした。しかも終電さ! 電車って、来たら結構な音がするよ! たくさんの人も乗り降りするよ! ざわつくよ! なのに気がつかなかったんですよね。本に夢中になりすぎて。仕方ないので、すぐに駅前のタクシー乗り場でタクシーに乗ったら、運転手さんから「あれ、まだ終電あるでしょ」と言われ、「本を読んでいて夢中になって、気がついたら出て行くところでした」と答えたら、「高い本代になりましたね」と言われたのはよく覚えています。でも、その時に何を読んでいたのかは覚えていないんだなあ。
なので私は楽屋では本を読まないようにしています。夢中になりすぎて出トチリしたら大変ですから。空き時間に楽屋で本を読む人は意外と多くて、小説や雑誌や漫画など、人それぞれの時間を過ごしているのですが、私はなるべく本は読まないようにしています。のめり込んじゃうから。

あるいはこういう経験は? 私は夜、寝る前に本読むことが多いのです。ちなみに、その時読む本は、昼間読んでいる本とは別でして、つまり昼間持ち歩く本と夜枕元に置く本は別なのでして、コレは単に一々本を取り出すのが面倒くさいというだけの理由です。
まあとにかく、2〜3ページ読んでいる内に眠くなって寝てしまうというサイクルで読んでいるのですが、たまに続きが気になって眠れなくなるコトがあるのですよ。初めのうちはチマチマ読んでいるのですが、物語が佳境に入ってくると面白くなって止まらなくなっちゃう本がたまにあるのです。これは小説に限らず、雑学本や伝記、解説書など、ジャンルにかかわらず気になる本というモノはあるのでして、もう続きが読みたくて仕方が無い、結果として夜を徹して読み上げてしまうなんて場合もありました。
こちらの方は、さすがに書名をいくつか覚えていますね。いくつかだけですけど。例えば高校生の時に読んだ栗本薫さんの「グインサーガ外伝1 七人の魔導師」とか、大人になってから読んだロバート・A・ハインラインの「夏への扉」とかアイザック・アシモフの「ファウンデーション」とかオーソン・スコット・カードの「エンダーのゲーム」とか。他にもたくさんあったのですが忘れちゃいましたかねえ。全部SFなのはしょうがないね。
これらの作品の共通点は、序盤はそれほど気を入れて読んでいなかったコト。初めのうちは数ページずつ読んでいたのですが、中盤から止まらなくなって一気に読み切ってしまいました。初めは電車の中で読んでいたのに、続きが気になって家に帰って読み切ったりもします。最初から最後まで一気に読み切ったことはありませんが、それはチマチマ読むクセのある私に限るのかもしれません。

さてさて、まあそんな読書ペースの私ですから大した量は読んでいませんが、近頃読んだ本で同じような経緯を辿った小説がありました。初めは電車の中でチマチマ読んでいたのですが、途中から続きが気になって、家に帰って一気に読んじゃったってのが。ああ、前置きが長かった。


ゲームウォーズ(上) (SB文庫)
ゲームウォーズ(上) (SB文庫)

それはアーネスト・クラインの「ゲームウォーズ」(SB文庫)です。映画シナリオ作家である著者の小説デビュー作。正直言ってB級SFだと思います。しかし! 私のような昭和ギークの心を掴んで離さない魅力があるのですよ今作には!

ええと、前置きが長過ぎちゃったので、内容については次回。

2014/06/22

捨て猫

最近気に入っているTVCMがこちら。




スクウェア・エニックスさんの「ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト」のTVCMですね。
能年玲奈さんがスライムに扮するスマホゲームのCMなんですが、能年さんの可愛さも印象的ですが、なんだか切なさもありますよね。

この切なさ、なにか記憶にあるなあと思い出したのがこちら。



PlayStationでリリースされ大人気となった「どこでもいっしょ」の追加ディスク「こねこもいっしょ」の広告です。当時、どの駅だったかは忘れましたが、駅貼りの巨大ポスターで見て物凄く心揺さぶられたのを覚えています。 切ない! 切なすぎる!
心は揺さぶられたのですが、買ったかどうかは覚えていません。買わなかったのかよ! いや、覚えていないので判りませんが、発売されたのは2000年なのでさすがに覚えておりません。ただ、このポスターは凄くインパクトがあったのよ。

やはり「雨の中に捨てられている」という王道シチュエーションが強いのでしょうね。切なくなります。
しかし、このコピーは秀逸ですね。

そうだ
にんげんになれば
もう
すてられないニャ。

篠突く雨を見上げるトロ(子猫時代)の画像と共に強く記憶に残るポスターでした。

2014/06/05

地テシ:056 今、世田谷が熱い! の巻

長かった「蒼の乱」(57ステージ!)も無事に終了し、次は「ラストフラワーズ」(62ステージ!)の稽古です。なんだかついこの前まで一緒だった人たちとまた一緒になりますよ。もう毎日毎日顔を合わせている人々なワケですが、でも大丈夫。「ラストフラワーズ」では約半分が新しい顔ぶれですから。これもまた楽しみですね。どうなるか判らないけど。

さあ、米apple社が待望の新OS X・Yosemiteと、新iOS・8を発表しましたね。
http://japanese.engadget.com/2014/06/03/wwdc-2014-ios-8-os-x-yosemite-swift/#continued
YosemiteはiOSっぽいフラットなデザイン。iCloud Driveや新safariなど、ネットとの親和性を更に向上、iPhoneとの連携も強化されてハンズフリーで通話できたり。
iOS8は複数のアプリを簡単に行き来できたり、キーボードが改良されたり他社キーボードを使えるようになったり、ユーザビリティが向上しているようです。また、写真アプリが強力になる模様。
いずれも正式リリースは秋頃になるようですね。ハードウェア関係の発表が何もなかったのが残念です。


いやあ、しかし暑いですねえ。6月上旬としては異例の暑さですが、まあ異常気象というほどでもないそうですよ。しかし北海道は相当に暑いそうで、お体にお気を付け下さい。梅雨入りするとちょっと涼しくなるらしいですが、今度は雨が心配ですね。西日本の皆様は大丈夫でしょうか。
さて、北海道や西日本も暑いですが、東京も暑いですよ。そして、特に今、世田谷が暑いです! いや、熱いです!

私は「ラストフラワーズ」の稽古が始まるまで観劇週間でして、色んな劇場に足を運んでいるのですが、二日続けて世田谷で刺激的な体験をしました。
世田谷の劇場といえばもちろん世田谷パブリックシアターとシアタートラムでしょう(実は下北沢も世田谷区なんですけどね)。世田谷パブリックシアターでは「THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー」、シアタートラムでは「関数ドミノ」が上演中です。

http://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/05/the_big_fellah.html
「THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー」は北アイルランドのテロ組織・IRAのニューヨーク支部が舞台。その闘争の物語を30年に渡って点描していくのですが、とても重い内容なのに描き方が軽やかなのです。手練れの俳優陣に優秀な若手演出家が描き出す人間くさいテロリストの日常。さっきまで笑って観ていたのに、急に足元の地面がガラガラと崩れていくような感覚。
鮮やかな演出も、生き生きとしたキャストもスタッフも印象的なのですが、特に小林勝也さんがお見事でした。たった1シーンにしか出ていないのに! そして加湿器をオススメしてくれた成河さんの可愛さったら!
「蒼の乱」でも民族闘争が描かれていました。それぞれに正義があり信念があり生活がある。この作品が、つまり北アイルランドとイギリスとの抗争を描いた舞台が現代のロンドンで上演された意義は計り知れないと思います。

http://setagaya-pt.jp/theater_info/2014/05/post_361.html
「関数ドミノ」はイキウメの作品。イキウメといえば昨年の「獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)」の衝撃が忘れられません。作・演出は数々の賞に輝く前川知大さん。前川さんの作品は佐々木蔵之介くんのTeam申や「奇ッ怪」シリーズでも拝見していますが、イキウメの公演を観るのは今日が二回目です。
ある交通事故で起こった奇跡。あり得ない現象を説明するために、ある男が提唱するドミノという理論。前川さんお得意の現象説明SFです。勝手な印象でごめんなさい。でも、個人的には、前川さんの作品って、クリストファー・ノーラン監督の作品群のように、設定されたあるSF的事象を説明するコトによって揺れ動く人の心を巧く描いているように思うのです。
今作でも、スタイリッシュな演出と達者な劇団員たちが観客の心を弄びます。次々と変わる場面と疾走感、あからさまな笑いではないが的確な面白さを笑っている内に、気がついたら氷のような冷たい手で締め上げられているような感覚。

どちらの作品も、軽やかに演じられていく内に心根が寒くなるような感覚を味わうという、演劇の醍醐味が詰まった舞台でした。「ビッグ・フェラー」は6/8まで、「関数ドミノ」は6/15まで。
そういえば先日無事に沖縄で大千秋楽を迎えた、ねずみの三銃士「万獣こわい」のシリーズもそういった傾向を持つ作品ですね。ちょっと括り方が大雑把すぎるかもしれませんが、こういうピリピリくる演劇作品って堪らないんだよなあ。そんなピリピリを求めて劇場に向かうのかもしれません。いや、ほんわかした作品も大好きなんですけどね。要するに舞台が好きなんでしょうね。
皆さんもこの梅雨、雨にも負けずに色々と劇場に行ってみて下さい。いろんな刺激がありますから!