2016/12/28

地テシ:083 「東京凸凹地形」展

前回は「It's a Sony展」と「大ラジカセ展」の二つをご紹介しましたので、展覧会繋がりでもう一つご紹介しておきましょう。

それは東京都立中央図書館にて現在開催されております「東京凸凹地形 -地形から見た東京の今昔-」という、いかにも私の趣味にピッタリの企画展示。図書館ならではの膨大な書籍資料を駆使して、東京の凸凹について詳しく説明しています。

近年、「タモリ倶楽部」や「ブラタモリ」などのテレビ番組や、東京スリバチ学会・大阪高低差学会などのフィールドワーク団体のお陰で、都市と凸凹の関係界隈が大変に盛り上がっております。関連書籍なども数多く出版されており、もちろん私の大好物なのですが、ついに東京都までが動き出しました。それがこの展覧会です。

都立中央図書館ですから東京に関する書籍なら他の追随を許しません。その膨大な資料の中から東京の凸凹に関する書籍を並べて、参考になるページには付箋も貼って、しかも手に取って自由に閲覧可能なのです。ただ、困ったことに、私はそのほとんどの書籍(官公庁の技術資料を除く)を持っていたんです。持ってるのかよ! 困るのかよ! 困んないだろ!
しかし、これだけの資料がズラッと並んでいるのは壮観でした。書籍はテーマごとに分類され、さらに古地図や古写真もパネル展示されています。解説も丁寧で、パネル展示だけ見ていても充分に面白いのですが、気になるテーマがあればその下のテーブルに置いてある書籍を読むと更に深く掘り下げられるようになっています。テーブルと椅子もたくさんあるのでじっくり腰を落ち着けて読むことができます。一冊ずつしかないから、誰かが読んでいたらその資料は読めないけどね。

そんな中、最も私の注意を引いたのが、会場に入ってすぐ左にドーンと掲げられている、展示の一番始めを飾る大きな標高地図。東京地図研究社作成の「東京全図」なのですが、横に長い東京都を納めるためにかなり引いた構図でして、お陰で武蔵野台地の古多摩川扇状地を広く見ることができます。
ここで目を引くのが、扇状地に中にポツンと島状に取り残された狭山丘陵。人工湖である狭山湖と多摩湖がある、トトロの森の愛称で知られる里山ですが、ココだけポツンと標高が高く、かつデコボコしているんですよね。
これは関東平野を形作る古多摩川の流路が、北東経由(現在の入間川、荒川方面)から南東経由(現在の多摩川)へと変化した時に削り残された部分のようです。なので島状に残っているんですね。
当展覧会は写真がNGだったのでお見せできませんが、iPhoneアプリの「スーパー地形」から似たような標高図を取り出してみました(この「スーパー地形」というアプリもスグレモノなので、いずれちゃんとご紹介したいと思います)。

このセンター部分が狭山丘陵。周りが放射状に平らなのにココだけ盛り上がってるでしょ。狭山丘陵に寄ってみるとこうなります。

人工湖がハッキリ判ります。確かに「削り残された」って感じがするでしょ。

このような地表の高さを色分けとデコボコとで表現した標高図は私の大好物ですが、東京に関してはこちらの都区部を中心としたデジタル標高図が有名でして、この印象が強すぎて東京都全図の方は忘れがちなのよ。だから、この展覧会でこの標高図を見た時に、特徴的な狭山丘陵が印象的だったって話。丁度地図のど真ん中だしね。


とはいえ、この展覧会の目玉はなんといっても立体地図「東京の微地形模型」が展示され、しかも話題となったプロジェクションマッピングまで行われているコトでしょう。このblogでも以前詳しくレポートしました。
http://awanemacoto.blogspot.jp/2012/07/2_15.html

「東京凸凹地形」展は撮影禁止だったのですが、この模型に関してだけは静止画のみ撮影可でした。

当時、期間限定で展示されていたあの立体地図をもう一度見るコトができるのです、マッピング映像つきで! これは気になるでしょう。2012年に見損ねた方はぜひ一度ご覧下さいませ。

こちらの「東京凸凹地形」展は2/12まで。ちょっと面白い仕掛けのクリアファイルも貰えちゃうよ。年末年始は改装も含めて休館日が多いのでお気を付けて。スケジュールの確認はこちらから。
http://www.library.metro.tokyo.jp/tabid/2287/Default.aspx?itemid=1436

会場となる都立中央図書館は有栖川宮記念公園の北東端。最寄り駅は東京メトロ広尾駅ですが傾斜地にあるので結構な上り坂になります。でも、この上り坂を登るという行為が既に地形に考察を巡らせるよいキッカケとなりますので、ちょっとした散策気分でお出かけ下さい。この辺りの地形も面白くていいんですよ。