2017/01/20

地テシ:088 ちょっと音楽の話を 《1/17OA対応版》

新年早々の「トリドクロ」出演情報に続いて、今春の出演情報が解禁になりました。
NAPPOS PRODUCE「スキップ」は北村薫さんの名作小説「スキップ」の舞台版。13年前にキャラメルボックスで上演された作品を、同じく成井豊さん脚本・演出でお届けします。2017年4月26日(水)〜5月5日(金・祝)にサンシャイン劇場にて。今作は東京のみの上演となりますが、GWの旅行気分でお越し頂けましたら幸いです。
詳しくはこちら。
http://napposunited.com/archives/807

さて、突然ですが、テレビ東京って面白いなあと思うんです。一応民放五大キー局の一つであるにもかかわらず、なんとなくひねくれているというか自虐的というか、一種アウトロー的な風格を漂わせているあたりが面白いですよね。
オンエアされる番組も、低予算を逆手にとって捻ったアイデアの作品が多いように思われます。

そんなテレビ東京で1/13から始まったドラマ24「バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」が面白いんですよ。出演は遠藤憲一・大杉漣・田口トモロヲ・寺島進・松重豊・光石研という、今やドラマ・映画には欠かせない名脇役たち。この一癖も二癖もあるおじさんたちが本人役で出演し、一つ屋根の下で共同生活をするというとんでもない設定。当然の如くただではすまず、第一話から大騒動。

私も田口トモロヲさんと松重豊さんとは共演経験があるので余計に気になるのよ。しかもみんな本人役。これまで出演してきた番組がネタになっていたり、ありそうでないような架空のドラマが出てきたり、明らかに有名番組のパロディだったり。
またテレ東さんがぶちかましたカンジがプンプン匂いますので、気になる方は是非。毎週金曜日の深夜OAですよ。


で、そんな松重豊さんが昨年からFMヨコハマで深夜音楽番組を始めたというのは御本人から伺っていたのですよ。ああ、憧れですよね、深夜FM音楽番組。学生の頃、深夜勉強のBGMはFM音楽番組でした。NHK-FMの「クロスオーバーイレブン」とかエフエム東京の「ジェットストリーム」とか。濃いコーヒーを飲みながら、時々ペンを止めて聴き入っていたもんです。
で、その松重さんの番組・FMヨコハマ「深夜の音楽食堂」にゲストとして呼んで頂きました。その一回目は去る1/17深夜に既にオンエアされてしまったのですが、念願の深夜FMで嬉しかったなあ。しかも私の好きな曲ばかり。そりゃそうだ。だって私のリクエストを掛けて頂いたんだから!

トークの内容は、まあ聞いて頂いた通りなのですが、ご紹介した曲についてちょっと補足しておきたいと思います。FMの音楽番組ともなれば紹介したい曲はいっぱいありまして、もう悩みに悩みまくったのですが、結局は「松重さんがお好きそうな曲」という観点で絞りました。どちらかというとヴォーカルのないフュージョンやクラブミュージック、いわゆる「インスト」モノの方が多い私ですが、今回は全て歌ありの曲ばかりを選んでいます。

まず一曲目は松重さんに教えて頂いてから大ファンになったサンフランシスコのアシッドジャズバンド・FIVE POINT PLAN「LIVE TODAY」(アルバム「Five Point Plan」収録)。
https://itunes.apple.com/jp/artist/five-point-plan/id16239375
どうやら私はこういう「ミドルテンポのシンプルなバックトラックに細かい譜割りのヴォーカルが乗る」曲が好きなようです。ハネるようなウネるようなタメのあるバックトラックに、シンコペーションで前の小節に喰っていくセクシーなヴォーカル。抑制の効いたベースとゴースト多めのスネア、エッジーなギターカッティング、ファンキーなオルガンソロ。
二枚のアルバムしか残していませんが、どの曲もグルーヴィでカッコイイ! ソウルとジャズとファンクとヒップホップが入り交じって、いいカンジに熟成されたようなバンドです。


二曲目はオランダのソウルクイーン・SHIRMA ROUSE「Take me as I am」(アルバム「Chocolate Coated Dreams」収録)。
番組の中で私はつい「シャーマ・ローズ」と言ってしまっていますが、どうやら「シャーマ・ラーズ」が正しいようです。これまたタメのある、ちょっとルーズめのバックトラックに、シャーマ・ラーズの伸びのあるパワフルなヴォーカルが乗るゴキゲンミュージック。ビートはシンプルですが、相当に細かい計算がされた複雑なグルーヴが心地よい。



このアルバムをリリースしているのは「SWEET SOUL RECORDS」という日本のレーベルで、名前の通りスウィートなソウルミュージックが満載です。私はこのレーベルのラインナップがお気に入りでして、ついレーベル買いするほど私好みなんです。まあレーベル買いという用語があるかどうか知りませんが、言ってみればジャケ買いの発展形でして、そのアーティストをよく知らなくてもレーベルを信じて買ってしまうこと。80年代頃はJ-POP系のCBS/SonyやEpic Sony、90年代はアシッドジャズ系のACID JAZZ RECORDSやTalkin' Loud、ブレイクビーツ系のNinja Tuneなどが好きでしたが、最近ではこのSWEET SOUL RECORDSやファンク系のP-VINEレーベルがお気に入り。
SWEET SOUL RECORDSさんの公式HPはこちら。
http://www.sweetsoulrecords.com
知られざる海外アーティストもたくさん紹介していますが、日本の若手ソウルアーティストをたくさん取り上げてくれているのも嬉しい。注目の日本人シンガーがソウルの名曲をカバーしているコンピレーションアルバム「SOUL OVER THE RACE」シリーズは愛聴盤です。




三曲目はGang Starrのラッパー・GURU「No Time to Play」(アルバム「Jazzmatazz,Vol.1」収録)。ヴォーカルはD.C.Lee、ギターはRonny Jordan。リズムパターンのサンプルはThe Love Unlimited Orchestraの「Satin Soul」のイントロ。これもヒップホップとジャズの融合として有名なアルバムでして、ヒップホップならではのシンプルなリズムループの上にグルーヴィなヴォーカルとギターとラップが乗っかっています。
大阪のオシャレ居酒屋で流れていて、あまりの格好良さにお店の方にお願いして曲名を調べ、その夜にはもうiTunes Storeで購入していたというほど好きな曲。今ならばShazamやSoundHoundといったスマホアプリで簡単に曲名を調べられますが、当時はそんな便利なアプリは持っていなかったので直接尋ねるしかなかったのですよ。



ビデオクリップもクールですね。

取り急ぎ、1/17OA分の、私の大好きな曲についてご説明いたしました。ええと、聴き損ねた方、まだ間に合います。
https://www.fmyokohama.co.jp/pc/program/ShinyanoOngakushokudo
PCでこの番組公式サイトに行って「radikoタイムフリーで聴く」ボタンを押して頂ければ、一週間以内なら聴けます。(聴取可能時間制限あり)
番組の公式ブログでも収録風景を取り上げて頂きました。
http://blog.fmyokohama.jp/yashoku/2017/01/16-f0f5.html

次回は1/24(火)深夜24:30からですので、おじさん俳優二人の音楽話に興味がある方はぜひ。
今回はちょっと音楽系の専門用語が多くてすみません。でも、気になる人はそれぞれ検索してみるがいいさ。ああそうさ。

2017/01/15

地テシ:087 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのよん

今年の頭に公表されましたので「トリドクロ」に出演することがやっと言えるようになりました。詳細はこちら。
http://www.tbs.co.jp/stagearound/toridokuro/
それと、新年一発目のお仕事は、松重豊さんがマスターを務めるFMヨコハマ「深夜の音楽食堂」のゲストです。1/17(火)と1/24(火)の24:30。全くタイプが違うのに、意外と好きな音楽が似ている二人のおじさんが音楽について話します。
http://www.village-artist.jp/UserNews/Detail/234
http://www.fmyokohama.co.jp/pc/program/ShinyanoOngakushokudo
FMラジオがなくても、スマホなら「radiko」というアプリで、PCならradiko.jp公式サイトで聞けます。さらに、一週間以内ならばradikoタイムフリーでも聞けますよ。


さて、前回に引き続き「The Witness」というパズルゲームにハマっているという話。美しい景色の中に散りばめられたパズルをひたすら解いていくオープンワールドパズルゲーム。シンプルな一筆書きパズルなのに、飽きずに楽しめて難しい。それは何故なのかって話ね。そのワケを書きましょう。

それは「どんどんルールが変わっていく」から。最初は「スタートからゴールまで繋ぐ」だけだったのが、なんか急に盤面に謎の記号が書き込まれた迷路に出逢うのです。こうなると何らかのルールに則って一筆書きを解かなければならない。ところが、そのルールについては一切書かれていないのです!
島を歩き回っていると、同じようなパネルが六つくらい並んでいる所があります。それが新ルールのチュートリアルらしい。といっても説明はないんです。簡単なパズルを新ルールの仮説を立てながら解いていきます。解けたならばその仮説は正しい。解けなければ仮説を立て直す。そうやって六つくらい解けばルールが理解できますので、その先の扉にあるパネルの迷路を解いて扉を開けたりしていきます。
ところが、しばらく進むと今度はまた別の記号が書き込まれた迷路が出てきます。そうすると解けない。だってルールが変わったから。
じゃ、この扉は放っておいて別の場所に行きましょう。そこがオープンワールドの良いところ。島は広い。まだまだたくさんパズルはあります。解けるヤツから解いていきましょう。その内に新しいルールもわかることでしょう。
噂ではパズルは650個以上もあるらしいです。中には体を使って解くパズルや島の大地自体を使うようなパズルも出てきますが、結局ぜーんぶ一筆書き! これほどまでに一筆書きにこだわった、しかしバラエティに富んだパズルは見たことがありません。

オープンワールドのお陰で、全てのパズルを解かなくても最終ステージには辿り着けます。なのでそろそろ終盤っぽいのですが、いやあ益々難しい! どんどん新ルールを理解して、どんどん行けるところは広がるのに、謎は深まるばかりです。え、ココもパズル? コレもパズル? ココとココが繋がってるの? この意味ありげなオブジェ何?
パズルの苦しみと楽しみ、ギミックの驚き、新鮮な閃き。空気感は往年の名作アドベンチャー「MYST」や「Portal」を思わせ、パズルを解いて進んでいくのはiOS・androidの名作パズル「Tengami」や「Monument Valley」を思わせます。
いずれも静かで独特の雰囲気を持つ名作ばかり。まあ、単に私がこういうタイプの作品が好きなだけでもありますが、こういうタイプなら何でも面白いかと言えばそうでもなく、中でも「The Witness」は相当に面白いと思います。
ただし、解けなくてかなりイライラしますけどね。悩みながら自力で解くからこそ面白い。その分だけ先に進めた時にはカタルシスを感じるのですが、相当にパズル大好きな人にしかお勧めできない作品です。

「The Witness」はPS4でダウンロード専売のインディーズゲーム(他にPC版と海外XBOX One版もあり)で、デザインしたは時間巻き戻し可能な名作アクション「Braid」を作ったジョナサン・ブロウ。インディーズゲームではメーカーの束縛がない代わりに予算が少ない場合が多いのですが、そのお陰できらりと光るアイデアの作品がたくさんあります。これもその成果の一つ。
ガンガン宣伝されるような大作ばかりでなく、こういう隠れたインディーズ名作がどんどん注目されると良いなあとか思います。では、また。




追加の後日談……

ようやくにして、ついさっきエンディングまで辿り着きました! あー、面白かった! そして辛かった! なんでお金出して買って、時間もたんまり掛けてまでイライラしているのか判りませんが、まあ要するに楽しいからなんですけどね。楽しく辛く、そして辛く楽しい。これぞゲーム。

なお、全てのパズルを解かなくても最終ステージまで行けるのですが、全てのパズルに挑戦したい方は、なんとなくラストっぽいなっと思ったらセーブしておく(ゲームを終了すればオートセーブされます)コトをオススメします。おおむねスタンバイモードで中断しながらプレイしてきた私は、今、エンディングを終えて呆然としております。さすがにもう一度頭からプレイし直す気力は無いぜ! するけど! するんかい!

2017/01/13

地テシ:086 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのさん

お正月三が日のどこかで都心のビジネス街を散策するのがここ数年の定番なのですが、それは普段は人通りの多い繁華街が閑散としているのを見るため。結構楽しいんですよ。
で、今年は目先を変えて虎ノ門から日比谷、丸ノ内と抜けてみたのですが、ここらはむっちゃ人が多い! 霞ヶ関あたりは街宣車と警官で騒がしいし、丸ノ内・東京は一般参賀の人と駅伝応援の人とでごった返すし。結局、いつもの大手町、神田、御茶ノ水あたりで人が少なくなってホッとするのね。


こちらは神田司町あたりですが、ほら、閑散としてるでしょ。いつもなら人と車で一杯の場所ですよ。


さて、待ちに待った「人喰いの大鷲トリコ」を頭を悩ませながらやっとクリアした私。「これ、どーやって解くんだ?」とホントに頭を悩ませたので、ダウンロードしたまま放っておいた「The Witness」というゲームを軽い息抜き気分で始めてしまった私。そしたら見事にハマってしまってずっとプレイしている私。そのままいつの間にか日付が変わって年を越してしまっていた私。そしてまた今年も頭を悩ませている私。そう、それが私だ。

「The Witness」はパズルゲーム。でもただのパズルではありません。一人称視点で探索しながら進むアドベンチャーパズル。いわば「オープンワールドパズル」なのです。ん? それはいったいなんだ?
オープンワールドというのは、ここ数年のゲーム業界で流行っている「ローディング無しで自由に移動できる広大なフィールド」のコトです。最近では「GTA5」とか「ウィッチャー3」とか「Fallout 4」とか、要するにシナリオの自由度が高く、広大なフィールドを歩き回りながら好きな順番で進んでいけるようなタイプのゲームです。先日発売された「FFXV」でもオープンワールドシステムが採り入れられて話題になりました。
「The Witness」の舞台はある無人島。決して広大ではありませんが、かなり自由に歩き回れます。この《フィールドを自由に歩き回れる》というのがポイント。

普通のパズルゲームの場合、トップ画面にズラッとパズルが並んで、一問が解けたら次のパズルがオープンして、みたいに進んでいきますよね。純粋にパズルをプレイしたいならそれが正解です。
しかし「The Witness」ではパズル問題が島のあちこちに散りばめられているのです。島には小屋や地下室や庭園などがあり、森あり池あり山があり。シンプルながらも美しい景色の中を歩き回りながらパズルを探してどんどん解いていくのです。とりあえずこちらのトレーラー動画をご覧下さい。



ちょっと怖そうな雰囲気がありますが、ホラー系ではありません。廃墟風の無人島だからちょっと不気味な感じはしますけど、コワくはありません。
で、この動画を見て頂ければ判るのですが、出てくるパズルというのが、全部「一筆書き」なんです。迷路風の一筆書きだけなんです!
アドベンチャーパズルの場合、解くべき謎はバラエティに富んでいるのが普通です。スイッチを押したり、石像を動かしたり、光を当てたり、謎のメッセージを解読したり。そうやって飽きさせないようにしているというか「今度はこう来たか!」という閃きを楽しむのです。
しかし! 今作では文字情報は一切無く、パズルはずーっと一筆書きなんですよ。「スタートからゴールまで一本線で交わらずに繋ぐ」だけの迷路。しかも大して広くない盤面。せいぜい6×6マスくらいの正方形。なのに飽きないんだよな! そして難しいんだよな! なんでだ?

その答えは次回!

2017/01/04

地テシ:085 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのに

やっぱり年越しちゃった! 2017年です! 今年もよろしく! 例年の如くゲームをプレイしながら気がついたら年を越していましたけど!

てなワケで年またぎで2016年の仕事まとめ! 舞台は新感線の「乱鶯」と「Vamp Bamboo Burn〜ヴァン!バン!バーン!〜」の二本だけ。それと「ドナインシタイン博士の禁断カフェ」に二回参加。
連載では誌名ごとリニューアルされた演劇専門誌「えんぶ」(旧演劇ぶっく)の人物ウォッチング。昨年は平野良、大東駿介、稲森いずみ、大谷亮介、上田大樹、小池栄子各氏(敬称略)を書かせて頂きました。同じくえんぶ系のネットコラム「未確認ヒコー舞台:UFB」で毎月第一木曜日に演劇用語の解説をさせて頂いています。
あとは「乱鶯」の稽古場レポートを書いたり、エイプリルフールには新感線公式ツイッターさんを乗っ取ったり、誤植込みでプロジェクトKUTO-10「あたらしいなみ」のチラシを作ったり。その節はすみませんでした。
以上まとめ終わり。こんなカンジ?


さあさあ、まとまったのでいよいよ「人喰いの大鷲トリコ」について語りましょう。この冬のプレイステーションTVCMでは年末の注目作品が山田孝之さんのパワフルな早口で述べられていましたが、その中で「FFXV」や「龍が如く6」と並んで名前が挙がったのがこの「トリコ」です。YouTubeの「PlayStation最新CM」チャンネルでは、このCMに加えて「トリコ」の発売カウントダウンCM五連作も見るコトができますよ。
https://www.youtube.com/playlist?list=PLOkZyHIVzUcO1sC99Xa0U3W17NAPLPAWJ
この「あと5日。ある会社員の場合篇」いいなあ。

まあ、それほどまでに待たれていてそれほどまでに注目されているというコトです。もちろん私も待っておりました。注目しておりました。ICOとワンダ好きならみんなそうだったと思います。この二作については前回をご参考に。

今作も前二作と同じように謎解き系アクションアドベンチャーです。主人公の少年が謎の遺跡に閉じ込められた所から物語は始まります。その横には「人喰い」と恐れられる、大きな犬のような鳥のようなトリコという獣が鎖に繋がれて横たわっています。さあ、どうする?
遺跡を脱出するためには少年とトリコが協力しなくてはなりません。高い壁を乗り越えたり遠い足場に行くためにはトリコの跳躍力が必要ですし、スイッチがある小さな部屋や狭い隙間を通るには小柄な少年でなければ辿り着けません。
当然ながら会話も通じませんので、コミュニケーションを取るのだって一苦労です。トリコがお腹が空いているらしい時にエサ(何やら光る物質が入ったタル)をあげても、始めはなかなか食べてくれません。しかし、何度もエサをあげている内に警戒心も解け、徐々に二体は仲良くなっていきます。始めはちょっとコワかったトリコが実に可愛く見えてきます。この二体の関係性の変化がイイんですよ!

先に進むためにはトリコに乗る(あるいはしがみつく)コトが必要。羽毛に包まれてモフモフなトリコに飛びついてよじ登るところはワンダっぽいですが、今作ではR1ボタンを押しっぱなしにする必要はありません。トリコに乗り、トリコと共に進んでいくコトで広がる(あるいは広がらない)謎の遺跡の閉塞感。数々の試練が二体を阻みます。

前二作が混ざったような作風になっておりまして、閉じ込められた遺跡から脱出しようとするのはICO風、相棒である大きな獣トリコによじ登るのはワンダ風。同じく重要だったR1ボタンは、今作では「トリコを呼ぶ」またはトリコに乗った状態で「トリコに指示を出す」ためのボタンになっており、これまた印象的です。

PS4になって画面がさらに美しくなりました。トリコの大きさと可愛さ、小さな少年との対比、遺跡の広さ高さ荒涼さ。巧妙なカメラワークも手伝って、空気感すら伝わる美しさです。まあ、このカメラワークは操作上ではちょっとうざったくはあるんですけど。「トリコ邪魔!」とか時々思いますけど。時々だけね。

しかし、例によってヒントが少ない。前二作と違って、今作では時々文字によるヒントがあり、成長後の少年らしき人の声で「その時、私は〜したのだった」みたいなコトを言ってくれるのですが、それでもまあ判らない。とりあえず、青い石の床や出っ張りは重要。あと、トリコの行動や向く方向も重要。今作もまた絶妙な難易度です。攻略情報をネットで探したくなるのをグッとこらえてほぼ自力で解きました。ほぼ? ええ、ネットサーフィン中に一部、ちらっとヒントが見えちゃったのよ。でもまあほぼ自力。それでもまだいくつかエサのタルを取り損ねているようですが、進行には支障はありません。

私はこのゲームを「声の出るゲーム」と呼びたい。謎が判らなければ「えー、どうすんの?」と呟き、謎が解ければ「よしっ!」とガッツポーズをし、少年が落ちれば「ああっ!」と声が漏れ、トリコが救ってくれれば「おおっ!」とため息が出る。これは、<見る>だけである映画と違って、<操作する>という行為が介在するゲームならではの快感のような気がするんですよ。プレイしながら何度も声が出て、何度もドキドキして、それがまた楽しい。もどかしくも楽しく操作しながら、小さく声を上げながら、そして時々イライラしながら、最後の方では終わるのが勿体なくなってきちゃうんだよなあ。



このゲームについてもう少し詳しく知りたい方は、AUTOMATONさんのこちら↓の素敵な記事をどうぞ。ICO、ワンダ好きの方のための、詩的で力強いレビューです。ネタバレはありません。
http://jp.automaton.am/articles/impressionjp/20161216-36257/

さて、前二作にはクリア特典がありました。ICOの二周目のスイカエンディングとかライトセーバーとか、ワンダのハードモードとかタイムアタックとか。今作でもちょっとしたクリアのご褒美がありまして、それで二周目に挑戦したくなるんですよ。で、二周目を始めちゃったんですけど、今はあるゲームのせいで一旦保留。トリコを保留してまで止まんなくなっちゃって、年越しまでもそのゲーム。
そのゲームが「The Witness」なのですが、コレについては次回。ってまた引っ張ります。

2016/12/30

地テシ:084 「人喰いの大鷲トリコ」と「The Witness」そのいち

さて、展覧会関係の話が続いてしまいましたので、ここらでちょいとゲームの話でも。ていうか2016年のまとめはしないのかよ! いや、したいんですけど、撮りためた面白写真も大量なんですけど、今はやはりこのゲームの話をせねばなりますまい!
それは! もちろん「人喰いの大鷲トリコ」!

私が「ICO」と「ワンダと巨像」が好きだというのはことあるごとに言ったり書いたりしてきましたし、実際にこの二つのゲームにはファンが数多くいます。そのクリエイター・上田文人さんの最新作となればプレイせずにはいられません。ていうかプレイしました。そしてやっとクリアしました!

思い起こせば7年前。2009年のE3でこの作品のビジュアルが発表され、世のゲーム好きが歓喜しました。もちろん私も歓喜しました。それから紆余曲折があり、発売日が延期されたりして、やっとこの12/6に発売されたのです! そりゃ買うでしょ! プレイするでしょ!

改めてまとめましょう。「ICO」は2001年にPS2で発売されたアクションアドベンチャー。謎の古城に閉じ込められた少年イコが、途中で出逢ったヨルダという少女と共に古城を抜け出すまでをプレイします。アクションではありますが、このゲームのポイントは謎解きにあります。行く手を阻む扉や段差を、スイッチを操作したりパズルのような仕掛けを解きながら進んでいきます。この仕掛けが難しい!
序盤こそ簡単な謎ですが、進むにつれて難易度が上がっていきます。文字情報のヒントは一切無く、交わされる会話も架空の言語と象形文字のような字幕ですから全く判りません。ヒントが出るとしても、ヨルダが怪しい場所を指し示すだけ。とにかく謎を解かない限り先には進めませんから、力業ではクリアできないんですよ。こっちのスイッチを押しながらあっちのスイッチを押すとか、動かせる足場を移動させて高いところに登るとか、バラエティ豊かな謎がイコとヨルダを(つまりプレイヤーを)悩ませます。
当時は攻略情報をネットで見るという発想がなかったので、謎に詰まると数日に渡って進めないという状況になります。そのぶん、数日悩んで謎が解けて先に進めた時には堪らない快感がありました。なるほど、そう解くのか! という正解に辿り着くまでは試行錯誤の連続です。こう書くと辛いだけのような気もしますが、当時は本当に苦しみながら楽しんでいたのです。
時には影のような煙のような敵キャラクターがワラワラと湧いてヨルダを連れ去ろうと寄ってきまして、それを木の棒で蹴散らしながらヨルダの手を引いて逃げます。この「手を繋ぐ」というシステムが今作のキモ。ヨルダは自発的には動かず攻撃能力もありませんから、手を繋いで連れて行くしかないのです。手を繋ぐにはR1ボタンを押し続けるしかなく、このR1ボタンを押しながら走ったり蹴散らしたりしなくてはならないという操作システムがイコとヨルダの絆を感じさせるものでした。
この練りに練られたゲームデザインが絶妙に作用して、私にとって、そして世のゲームファンにとって忘れられない作品となったのです。


「ワンダと巨像」も同じスタッフが手がけた、PS2で2005年に発売されたゲーム。こちらも同様のアクションアドベンチャーですが、ちょっと趣が違います。
主人公はワンダという青年。ワンダは愛馬アグロと共に広大なフィールドを駆け回り、その各所に点在する巨像を斃して廻ります。巨像は名前の通り巨大な石像で、それぞれ人型や動物型の異なった姿をしています。その全てに弱点があり、ワンダがその巨像によじ登って弱点を攻撃すればそのステージのクリアとなります。
今作のキモがこの「よじ登る」という動作。巨像の表面には毛のような草のようなものが生えており、R1ボタンを押すことによってその毛を掴みよじ登ることができます。つまりR1ボタンを押しながら各種アクションをしていくのですが、この点がICOとの共通点。また、巨像に辿り着くまでに仕掛けを解いていかなければならないのも共通点です。
どうやって巨像に取り付くのか、どうやって弱点に辿り着くのか。ICOと同様に独特の美しく静謐な世界の中で冒険は紡ぎ出されます。二作ともイベントシーン以外にBGMはほとんど無く、基本的に風音などの効果音のみで構成されます。これがまた世界観の構築に一役買っているのです。

二作ともプラットフォームはPS2でしたが、2011年にはPS3用にリメイクされています。絵が綺麗になったり3Dに対応したりしていますが、ゲームシステムは全く同じ。謎解きの難易度も同じで、再プレイしても色あせない魅力が詰まっていました。

そして「ICO」から15年、「ワンダと巨像」から11年、リメイクから5年。いよいよ上田文人最新作である「人喰い大鷲のトリコ」が発売されたのですよ! プレイしたよ! クリアしたよ!


といったところで長くなっちゃったので、「トリコ」については次回。ていうか、例によって年内にまとめられるのか?